マカロンの思い出

カロンを初めて知ったのは13歳の時で、阪神淡路大震災とか地下鉄サリン事件とかが起きる少し前のことだ。
知ったといっても、図書館で借りたイプセンの『人形の家』の中に主人公の好物として登場しただけのことで、私自身が口にしたわけではない。小説に出てきたマカロンが何なのか全くイメージができず、それはそれは困惑した。


マから始まる洋菓子と言えばマシュマロだけどどうもそれとは違うようだし、一字違いのマカロニはお菓子ではないし、ノラが恋焦がれているマカロンとは一体どれほど素敵なお菓子なのかと、もやもやしながら読了した覚えがある。


いつのことだったかもう覚えていないけど、数年前に初めて食べたマカロンは、口に入れるともそっとして、それほど私の好みではないと思った。でもほんのり香るフレーバーと見た目の可愛さには心がときめいた。


あの時の私と同じ年代の子供が同じ本を読むときには、私が抱いた疑問はクリアな状態で読み進められるのかと思うと少し感慨深いものがある。でもそれが何か分からない上に調べる手段もないまま、想像だけで読み進めるしかなかったのは、それなりに密度の濃い読書経験だったなぁとも思う。